古くからオリーブの木は、地中海沿岸では、オリーブオイルを採るための貴重な資源でした。
原料となる木は、若くても樹齢80年以上、ほとんどは100年以上、中には数百年という樹齢のものも多い古木です。
何世代にもわたって守られ、そして多くの人々を養ってきたその木が枯れてしまったり、何らかの理由で倒れてしまった場合に限って、それらを材料にすることが可能な、とても貴重な木材です。
そのためオリーブの木は、一本ずつ政府や自治体によって厳重に管理され、誰でも勝手に伐採することは出来ず、非常に硬い木質のため、加工も限られた人々の手でしか行えません。
長い年月の樹齢の後に伐採されたオリーブの木は、板状に切り出してからさらに3年〜7年、自然の中で乾燥させたものが材料となります。
オリーブの木がキッチン用品に使われる理由の一番は、その非常に密度の高い木質にあるといえます。よく乾燥させたオリーブは、とても硬質で、叩くと甲高い音がするほど高い密度となります。この性質のため、加工しても強度が保たれ、堅牢で長く使い続けられ、なにより水はけが良く、特にキッチンまわりの道具にはうってつけだったのです。
またオリーブの木の中にある成分に抗菌性があり、衛生面でも効果があったことも大きな理由といえます。
オリーブの木は、旧約聖書では大洪水の後、陸地を探すためにノアが放った鳩がオリーブの枝をくわえて帰ってきたことなどから、いまでは様々な平和のシンボルともなっています。
地中海沿岸地域の人々にとって、オリーブの生える大地は、平和と繁栄、そして豊かさの象徴だったのです。
それ故に、彼らのオリーブに対する愛情はとても大きく、枯れてしまったオリーブを捨ててしまうのではなく、いつまでも自らの生活に残しておこうという愛着も、これらの製品を支えている大きな理由のひとつだといえるでしょう。
■オリーブの木、その木目の美しさ
オリーブの木は、材木用に真っ直ぐに育てられた杉や檜とは違い、何百年もの間、厳しい環境の中を生き抜いてきた紆余曲折をそのままに、複雑な年輪や、ユニークで強い木目が特徴的です。
ストラーダビアンカで取り扱っている木製品は、どれもこうした独特な木目を存分に楽しむことが出来るものばかりです。特にまな板は、その木目を楽しみながら選んで頂けるように、一品物として一点ずつご紹介しています。両面の木目や特徴的なサイド部分も写真でご確認いただけます。
ここではまな板を中心に木目のバリエーションをいくつかご紹介します。
杉板のような真っ直ぐな木目。まな板に使う材料は、強度と大きさのために、幹の太い部分や、根に近い部分が多いので、こうした整った木目はむしろ稀です。
一枚の板の中で、節や複雑な木目とあいまって不思議なバランスを醸し出します。
絡み合った木目に乾燥時の木のよれが加わり、さらに縦横に模様が重なりあうことで、一層複雑な表情になります。長い年月が産み出した重みが伝わってくるようです。
トラの模様のようなトラ杢など味わい深い木目が多くあります。
根に近い部分を使ったものには、バーズアイという模様が生じます。日本でいう銘木にもこのような模様が多く、自然が育んだ奇跡をお楽しみいただけます。
バーズアイは銘木の愛好家にとって憧れの杢のひとつでもあります。
複雑に絡み合った木目たち。多くのまな板は、このようないくつもの節とその周囲に生じた複雑な年輪による木目でできています。その表情は世界にひとつしかありません。すっきり目のものから、激しく絡み合ったものまでそのバリエーションはまさに無限です。
木材によっては嫌われることもある節ですが、オリーブの場合むしろここが一番の特徴となります。この部分は密度も高く、強度に優れています。また、見た目にも強いアクセントとなり、ナチュラル感をより一層アピールします。
まさに銘木の風情をたたえる、なんとも言葉にしにくい複雑な模様。有機的な模様となった木目はしっとりと無垢板の力強さを表現しています。線的な木目とはまた違った味わいがあります。
■側面に宿る職人のアイデア
まな板の表面はいうまでもなく、ほぼまっ平らです。そこで職人の創意工夫が生きるのは、全体のフォルムとサイド部分。ここではサイド部分に施された工夫をいくつかご紹介します。実際のまな板は、これらの工法が、いくつもひとつのまな板の中に施されている場合も多く、様々な角度で飽きることなくお楽しみ頂けます。
ラフカット
原木の表皮を残したり、形状のユニークさをそのままに、ラフに削り出したタイプ。
オリーブの木のナチュラル感を最も強くイメージできるカッティングです。
ストレートカット
まな板の水平な面に対し、ほぼ直角に切り落としたタイプ。
角は丸くラウンドして削ってあるものや、面で削られたものなど様々。
ユニークカット
側面を幾つかの面でザクザクと削り出したタイプ。
職人の手の動きで、様々なバリエーションがあります。
■まな板の持ち手の形
日本のまな板には取手はついていませんが、イタリアのまな板にはなぜか持ち手がついています。
オリーブのまな板は、重量もそこそこあるので、実際に持ち手があると、これがなかなか便利なのです。お店でオリーブのまな板を手に持っていただくと、必ずいわれるのが「結構重いですね」という言葉。しかし、そういいながらも、お客様は片手で持ったまま、軽く振り回していたりもします。
持ち手の多くは、握りやすさナンバーワンのラウンドタイプと、すっきりしたデザインのストレートタイプに分かれますがが、これも全て同じ形がなく、曲がった鎌首や先の尖ったものなどバリエーションに富んでいます。
デザイン面でのアピールだけではなくて、パーティーでお客様にまな板ごとサーブするときなどにも重宝します。日常的にも、片手できちんと握れることで、重いまな板もしっかりつかめて安全ですし、忙しい時もさっと取り出せます。
取っ手には穴が空いていますので、紐を通してキッチンの壁面に掛けたりする事もできます。またディスプレイとしての効果も抜群です。
■イタリア的気質?-手作り品ならではの・・・
時には、手仕事ゆえ、あるいはイタリア的な気質によるものか、その削り具合は、日本人から見るとちょっと荒っぽく見えたりもします。
また、木製品ならではの節目や、木目に生じる亀裂や隙間、あるいは古木を乾燥させる際に生じるひび割れなど、高度な工業製品に慣れてしまった目には、若干の違和感があるものもさえ、彼らにはその木が持っている特徴なのだと思えるようです。それでも不思議なことに、削り目がゴツゴツと残った姿は、それ故に単純に機械で均一にスライスされた表面のような無機質さとは違い、人の手のぬくもりさえ伝わるような気配さえ感じることが出来たり、そんな味わいほど、長く使い続けていくうちに生じるキズとあいまって、世界にひとつだけの我が家のまな板となっていくのです。
これらのキズについては、商品ごとにご説明していますので、お買い上げの際にご確認下さい。それでもお手元に届いた商品がお気に召さない場合は、他の商品との交換も承っております。
■木の道具は使い続けてこそ
木の道具を使う楽しみは、使い続けるなかで様々に変化することです。
新品の時のオリーブの木目の美しさは、得も言われぬものですが、使い続けて、すり減り、傷ついた姿もまた美しいものです。
家族の歴史が刻まれたその姿は、まさに世界に一つだけの風格を備えます。
また、木は季節や温度、湿度に合わせて伸縮します。
小さなひび割れなどは、気がついたら元に戻っていたりすることもあります。
使い続けるとみすぼらしくなってしまうプラスチックの製品などでは、決して味わえない、木の道具ならではの愛着のある変化を末永くお楽しみください。