オリーブオイルの基礎知識

2.オリーブオイルの分類と種類

国際オリーブオイル協会(IOOC)の規定によるオリーブオイルの分類
分類 品質 酸度 備考
バージンオリーブオイル
果実をそのまま搾った物
エクストラバージン
オリーブオイル
0.8% 官能検査により完全な食味を持っているとされたもの
ファインバージン
オリーブオイル
2% 官能検査により、若干の風味が損なわれているとされたもの
オーディナリーバージン
オリーブオイル
3.3% 官能検査により、複数の欠点があったとされるもの
ランパンテバージン
オイリーブオイル
3.3% 官能検査により、多くの欠点が認められたもの
 
精製オリーブオイル
ランパンテまたは搾り滓の抽出オイルを精製した物、非食用
リファインド
オリーブオイル
0.3% ランパンテを精製したもの
リファインド
オリーブポマースオイル
0.3% バージンオイルの絞りかすから化学的に溶剤抽出したもの
 
オリーブオイル
(ピュアオリーブオイル)
精製オイルにバージンオリーブオイルをブレンドしたもの
オリーブオイル 1% 精製オリーブオイルとバージンオイルのブレンド
オリーブポマースオイル 1% オリーブポマースオイルとバージンオイルのブレンド

オリーブオイルは、IOOC(国際オリーブオイル理事会)によって定められた基準によって分類されています。
大きくバージンオリーブオイル、精製オリーブオイル、オリーブオイルの3つに分けられ、さらにその中でもグループ分けをして合計8つのカテゴリーに分類されています。
しかしこの中には、食用ではないレベルの物や現在の日本の食用油の基準を満たさない物も含まれていますので、実際に日本の販売店で目にすることができるは、JAS(日本農林規格) の規定[=酸度が2%未満であること]によって、そのうちエクストラバージンオリーブオイルとピュアオリーブオイル(オリーブオイルとも表記)2つの種類となっています。

ただここで忘れてはいけないのは、これらの規格は主にヨーロッパなどで適用されるものであって、日本の規格とは異なる点です。 日本にはこのようなオリーブオイルの等級を示す規格はありません。これは日本で本来エクストラバージンの品質に満たないものにエクストラバージンのラベルを貼って販売しても罪にはならないということでもあります。このため、日本国内においては、疑問のある商品も多く出回っている実情もあります。

・エクストラバージンオリーブオイル

バージンオリーブオイルとは物理的な加工(粉砕や圧搾等)以外に一切の化学的な処理を行わずに抽出されたオリーブオイルをさします。バージンオリーブオイルにはその最高峰にエクストラバージンオリーブオイルが存在します。エクストラバージンとはイタリア語で「最高に純粋」を意味します。酸度*が0.8%以下で、義務づけられている官能検査で完全な食味と香りを保っているものと認められる必要があります。
しかしエクストラバージンオリーブオイルと称していても、内容は製造過程や、原料などで実態は様々なのです。オリーブの種類もさることながら、生産される地域や文化によってオイルの抽出方法も様々です。そしてなにより大事なことが、そのオイルが大量生産やコスト削減のためにオリーブ本来の風味や滋養を損なうような作り方をされていないかどうかということです。
IOOCの基準はオリーブオイルを大きく分類する上では役に立つのですが、本当に上等で美味しいオリーブオイルを選ぶにはちょっともの足りません。1リットルのボトルに入って1,000円以下で販売されるエクストラバージンオリーブオイルもあれば、250mlで2,000円以上もするオイルがあるなど、実際のオリーブオイル売り場の様子を反映しているとは言い難いものがあります。必ずしも価格やラベルの美しさは、オイル自体の価値と同じではない場合もあります。多くの大メーカーによる大量生産品は、ブレンドオイル*です。その年の収穫高や市場の様子から、大量に確保できるオイルを基本に様々な生産地のオイルがブレンドされて毎年均一なクオリティで製品化されています。
これに対し、生産者自らが誇りを持って自らの手で育てたオリーブだけを原料に、良心的に作られたものがシングルエステート(単一農場)といわれるオイルです。これらが、同じ「エクストラバージン」という名称であっても、その内容に大きな隔たりがあることは、賢い消費者であれば瞬時に理解できるはずです。
ラベルに「エクストラバージン」と書かれていても全て同じオイルではない、詳細はこの後で説明します。賢い消費者であり、食と人生に喜びを見いだす人々は、お気に入りと呼べる美味しいオリーブオイルに出会うために、ラベルに表記されている以上のことを知る目を持つことが必要なのです。

・オリーブオイル(ピュアオリーブオイルあるいはポマースオイル)

日本における食品基準となるJASでは、オリーブオイルはオリーブの実を原料とし、酸度2%以下であることが定められていますので、バージンオリーブオイルの中で販売できるのは、エクストラバージンだけですが、化学的に精製されたオリーブオイルも酸度が2%以下であれば販売可能です。
ピュアオリーブオイル、あるいはポマースオリーブオイル、またはオリーブオイルとだけ表示されている場合もあります。これは、バージンオリーブオイルを絞った残りの部分から、溶剤抽出など化学的に精製されたオリーブオイルとバージンオリーブオイルのブレンド品です。一般的に、精製されたオイルは酸度は低いですが無味無臭となりますので、食用として販売されるのは風味のあるバージンオイルとブレンドしたものになります。
そもそもコストの低減と大量生産を目的に作られたオイルですので、上等のエクストラバージンのようにオリーブ本来の味わいを求めるものとは大きく異なります。逆に香りの少なさや味わいのマイルドさから、調理用のオイルとしては便利な場合もありますが、これはオリーブオイル本来の美味しさを味わうという目的とは、少し違う観点でもあります。

・有機オリーブオイル

良質なオリーブオイルには、エクストラバージンであるばかりか、有機の認定を受けているものもあります。イタリアではBIO(ビオ)と書かれEU有機認定のマークが表示されています。 EUの有機認定は栽培しているオリーブ畑で農薬を使わない、土壌が農薬に汚染されていない、周囲の環境も農薬などに汚染されておらず、その影響を受けないなど栽培上の問題だけでなく、製造、貯蔵、梱包、販売までのすべての過程で、その基準を満たしていなくてはいけません。そのため搾油所も、有機の認定を受けているところで搾油を行う必要があります。
最低でも年一回は事業所や農園の検査が、時には抜き打ちで行わます。
この基準は厳格に守らなくてならないものであり、認定を受けている生産者に規則違反が認められると認定が取り消されるだけでなく、刑法上の罰則もあります。
有機認定は、良質なオリーブオイルを選ぶ良い指標となります。
しかし、イタリアなどの古くからオリーブオイルを作っている小規模の農場では、この有機の基準を充分に満たしているにもかかわらず、有機認定を受けていない農場も数多くあります。これはそもそも、生産高がそれほど多くなく、認定を受けるには費用もかかるため、あえて認定を受けるまでもないという農場です。こうした良質な農場もあるので、有機のマークがついていなくとも、良質なオリーブオイルは数多くあります。

・単一品種のオリーブオイル

オリーブ畑では一般的にいくつかの種類のオリーブを栽培し、それらは取り分けられることなくすべて一緒に収穫しオイルとなります。これにより、どの品種を植えるのか、そのバランスなどでそれぞれの地域の伝統であったり、その農場の個性となったりもします。複数種類植える理由は、オリーブは自家受粉しにくく同じDNAの花粉も反応しにくいことも大きな理由です。例えば、トスカーナでは伝統的にモライオーロ種、フラントイオ種、レッチーノ種の3つの種類が栽培されています。
最近はグルメ志向の高まりから、それらの中から単一の品種だけに絞ったオリーブオイルも生産されています。本来は数種類で総合的な味わいであったものを単一品種に絞ることで、味わいはやや奥行きに欠け、シンプルになる傾向もありますが、その品種の味がダイレクトに味わえるなど、ややマニアックな楽しみ方ともいえます。

*酸度

オリーブの実からオイルに加工する際に生じる遊離酸度。鮮度の目安にもなり、また風味の成分が破壊されていないことを示す基準ともなります。収穫から製造過程で長時間空気にさらされていないことが重要であり、また作業自体の丁寧さも大きな要因となります。化学的に精製したオイルでも、酸度を低く抑える技術もありエクストラバージンオリーブオイルと同等な数字を持つものもありますが、ほとんどの場合その風味は全く失われたものとなります。

*ブレンドオイル

オリーブオイルは最終的に瓶詰めされた国が原産国となります。そのため例えば原料となるオリーブ、あるいはオイルが別の国で生産されていたとしても、イタリアで瓶詰めされることでイタリア産となります。ブレンド自体は、良心的に行えば様々な風味のよい部分を混ぜることで、美味しいオイルを作ることも可能ですが、現実には大量生産やコスト、そしてその品質を均一に保つために行われることの方が多いようです。世界中に販売している大手のブランドや、大瓶で比較的安価に販売されているオイルが当てはまるでしょう。

*シングルエステート

単一の農場で収穫されたオリーブの実のみを原料としていることです。その土地の文化や伝統に基づき丁寧に生産されているものが多く、味わいや香りも地域やオリーブの品種、そして圧搾方法などで非常にバラエティーに富んでいます。オリーブオイル本来の姿であるともいえ、もっとも上等なオリーブオイルとなります。ストラーダビアンカで取り扱っているヴェローニのオイルはシングルエステートです。
畑の面積、その年の収穫高などに左右されますので、大量生産には不向きです。しかし、自らの作るオリーブに誇りを持つ優良な生産者によってこの伝統は守られているといえます。小さめのボトルで、やや高い値段で販売されることになります。

1.人生を豊かにするオリーブオイルに出会うために
2.オリーブオイルの分類と種類
3.オリーブオイルの作られ方
4.オリーブオイルの成分と健康への効果
5.オリーブオイルをめぐる問題