オリーブオイルの基礎知識

4.オリーブオイルの成分と健康への効果

■成分表
  オレイン酸(g) パルミチン酸(g) ステアリン酸(g) リノール酸(g) リノレン酸(g)
オリーブオイル 70.5 9.31 3.01 9.78 0.75
ごま油 36.58 8.44 4.97 42.02 0.56
サフラワー油 12.68 6.91 2.46 72.27 0.19
とうもろこし油 32.51 10.49 1.97 47.32 1.41
ひまわり油 17.9 6.31 3.49 65.85 0.66
落花生油 40.42 11.1 3.9 33.99 0.52
ソフトタイプマーガリン
(JAS標準マーガリン)
31.68 12.52 4.71 24.73 2.09
有塩バター 18.39 22.13 8.3 1.94 0.52
文部科学省 五訂増補日本食品標準成分表による

成分表を見ておわかりのように、植物油でも様々な成分の傾向が見られます。特に顕著なのはオレイン酸を多く含む物と、リノール酸を多く含む物に傾向が分かれる点です。リノール酸はCMでも歌われるほどポピュラーなものですが、実はよいことばかりでもありません。リノール酸は食用油以外の多くの食品に含まれていているものでもありますが、オレイン酸は上記の表でも、他のオイルではそれほど多くの量を含まないにもかかわらず、オリーブオイルにのみ大量に含まれています。この成分量の違いが、オリーブオイルが他のオイルと決定的に違う点でもあります。

■脂肪酸中の成分表
  飽和脂肪酸(g) 一価不飽和脂肪酸(g) 多価不飽和脂肪酸(g)
オリーブオイル 12.3 71.2 10.5
ごま油 14.2 37 42.6
サフラワー油 9.4 12.7 72.5
とうもろこし油 12.5 32.5 48.7
ひまわり油 9.8 17.9 66.5
落花生油 21.7 41.5 34.2
ソフトタイプマーガリン
(JAS標準マーガリン)
17.54 31.99 26.85
有塩バター 51.44 20.9 2.43
文部科学省 五訂増補日本食品標準成分表による

この表は、脂肪酸の中の成分を表しています。
脂肪酸は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の二つに分離され、飽和脂肪酸は血液中のコレステロール値を高める働き、不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸と多価飽和脂肪酸)は低める働きがあるといわれています。植物油は概ね不飽和脂肪酸が多く、全体ではコレステロール値を下げる作用を持っていますが、この不飽和脂肪酸がさらに2種類に分類さている理由は、多価不飽和脂肪酸(リノール酸やリノレン酸)は過剰に摂取すると悪玉コレステロールのみならず、善玉コレステロールまで下げてしまうからなのです。一方、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸は善玉コレステロールには作用せず、悪玉コレステロールのみを下げるというまさに理想的な働きを持っています。

オレイン酸

オリーブオイルの主要な成分は何といっても70%を超えるオレイン酸です。非常に安定性が強く、酸化しにくい性質を持っています。
オレイン酸のもっとも代表的な効果といわれているのが血液中の善玉コレステロールには作用せずに、悪玉コレステロールのみを除いてくれることです。これにより、動脈硬化や心臓病や高血圧に効果的といわれています。体内でも合成される物質ですが、食品からの摂取も期待されています。

リノール酸

人体では合成できない必須脂肪酸のひとつでありますが、食用油以外の多くの食品にも含まれており、現代生活の中では過剰摂取の傾向があります。多価不飽和脂肪酸であるリノール酸は悪玉コレステロールのみならず、善玉コレステロールも取り除いてしまい、動脈硬化や心臓への負担を増やし、心筋梗塞、血栓などが心配されます。また肥満の原因のひとつともいえますので注意が必要です。必須脂肪酸ですので食品からの摂取が重要ですが、オリーブオイルにも非常にいいバランスで含まれています。

その他のオリーブオイルに含まれている成分

ビタミンA/D/K/E、特にビタミンEが豊富に含まれています。 その他にβカロチン、ポリフェノール、オレオカンタールなどの抗酸化物質が含まれ、細胞の老化を防ぎ、体の内側から若さを保つ働きがあります。

ポリフェノール・オレオカンタール
良質なオリーブオイルが持つピリッとしたスパイシーな刺激の成分がこれにあたります。
抗酸化作用があり、体の調子を整える役目をします。抗酸化作用とは、ストレスや外的要因で体内に発生する活性酸素を抑え、身体の老化や、様々な病気のリスクを減らします。オレオカンタールは、抗炎症作用もあり、心臓病の予防に効果があるといわれています。

迷信

健康的な食品には、迷信もつきものです。
かつて「地中海式ダイエット」が大きな話題となり、アメリカをはじめ、世界中で爆発的にオリーブオイルが広まりました。この波は日本にも押し寄せ、それがオリーブオイルは健康によいという認識のひとつともなっています。
ただここで懸念しなくてはいけないのは、地中海式ダイエットとは、健康な身体を得るための食事への規定であって、痩身のためではないことです。ここにあげられた様々な効果を地中海的な食事法によって実現するための方法です。
ネットなどで「オリーブオイル・ダイエット」などと入力すると、そこにはオリーブオイルで痩せる方法が無数に検索されます。オリーブオイルは油なので、カロリーもある食品ですので、これを食べただけで痩せることは非常に考えにくいことです。食事療法で痩身・減量を行うのであれば、バランスよく食事をすること以外にありませんので、その品目としてオリーブオイルを選ぶことは大いにあり得ますが、オリーブオイルを食べると痩せるというのも現代の迷信といわざるをえないでしょう。

健康への効果

オリーブオイルの健康への効果は、以上に挙げたように、悪玉コレステロールをコントロールし、心臓疾患、高血圧に効果的であり、さらに抗酸化作用により痴呆症、老化といったアンチエイジング効果も期待できます。抗酸化作用は、ストレスなどの外的要因からも病気のリスクを減らしてくれます。まさに現代の私たちの生活に非常に有効な成分だといえるでしょう。
また胃に負担がかかりにくい性質から、胃炎や胃潰瘍の治療にも使われていたこともあり、また腸の働きも活性化するなど、便秘にも大きな効果があります。
また、オレイン酸などの不飽和脂肪酸は、人間の皮膚と非常に近い組成を持っていることからスキンケアやヘアケアの効果もあるといわれています。食材として用いることで内側から、直接皮膚などに用いることで角質層の乾燥を防ぎ、しっとりとした肌を保つなどの効果があります。

オリーブオイルをまさに自らの食文化の象徴と讃える地中海沿岸地域では、他の地域に比べ心臓疾患が少ないという重要なデータがあります。これは現在ではオリーブオイルによる効果といわれ、化学的にも様々な研究がなされています。この地方ではオリーブオイルはまさに最重要な食材のひとつであり、それ故に単なる食品のレベルを超えてまるで万能薬とさえいえるほど様々な健康への効果が謳われています。

健康のための食品として、オリーブオイルの有利な点はあらゆる調理、メニューに使うことができるという点でもあります。
体に良いといわれる食品は数多くありますが、その食品が体に良いといわれても、そのために特定の調理方法やメニューを用意しなくてはいけないとなるとなかなか持続しにくいものですが、オリーブオイルはそのような工夫をせずに、毎日ほとんどの食事に活用できます。このため、地中海地方の食事の基礎となり、この地域の人々の健康を支えてきました。

オリーブオイルが健康によいということを、科学や成分の分析で計ることはこれからも続けられていくでしょう。
しかしそれ以上に「生きる」ことをなによりも楽しみ、謳歌している文化に、この黄金のオイルが必要だということは、大変重要なことだと思います。そして今もなおその効果を実感している人々を世界中に増やし続けていることも見逃せません。
健康への効果はサプリメントのような、成分を体内に取り込むことで何かが得られるという考えではなく、日々の生活をいかに楽しみ豊かにしてくれるか、その中から人が何を得られるのか、そのことが最も重要なのではないでしょうか。ここまでお読み頂いた方にはすでにお分かりのことと思いますが、オリーブオイルは単なる食品ではなく、大地と風と太陽に感謝し、人生を楽しむ歴史と文化に深く結びついた存在です。
オリーブオイルのもっとも大切な効果は、ひとたび、その純粋な液体を人生の友とすることができたら、そこには美味しく健康的な日々が待っているということです。オリーブオイルのもっとも重要な効果とはそんな「人生を豊かにする」ということだといっても過言ではないでしょう。

1.人生を豊かにするオリーブオイルに出会うために
2.オリーブオイルの分類と種類
3.オリーブオイルの作られ方
4.オリーブオイルの成分と健康への効果
5.オリーブオイルをめぐる問題